ブッシュ前大統領の早大での講演

  先月18日の稲門祭の頃、競技スポーツセンターの山本浩氏(YBCにもよく協力し...

ブッシュ前大統領の早大での講演

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  先月18日の稲門祭の頃、競技スポーツセンターの山本浩氏(YBCにもよく協力してもらっている)から「11月4日にブッシュ元大統領がワセダで講演しますが、お聴きになりますか?」と連絡を受けた。さらに、野球部先輩理事の関口昌男氏から「聴講者は全て野球部でまとめて、大学側に申請致します」というメールも入った。
 15時からの講演だったが、稲門倶楽部員は13時半に集合せよとの指示通りに、リーガロイヤルホテルに到着すると、SPらしき人たちが厳戒態勢をとっていた。本村稲門倶楽部会長はじめ、鈴木先輩理事、石井連蔵氏、徳武定祐氏、小宮山悟氏など30余名が、緊張の面持ちで引率者を待った。
 講演会場は安部球場跡地に建った井深記念ホールである。千人収容の会場が満席だったが、座席は指定されていて、私は院生の時の指導教授とご一緒で一番前だった。特別席だったが、その理由は講演に先立つ以下の挨拶(村岡功スポーツ科学学術院長)でわかった。
 「2003年5月に始まった『アイク生原&ピーター・オマリー記念スポーツマネジメント講座』は、当初の予定通り2008年3月に第10回の講座が開催され、それをもって終了したが、この度この講座の開講にご尽力いただいたピーター・オマリー氏からご推薦いただき、第43代アメリカ合衆国大統領であり、アメリカ大リーグテキサス・レンジャーズの共同オーナーも務め、イェール大学時代にはラグビーをプレーし、高校時代にはヘッド・チアーリーダーであった、George.W.Bush氏によるSpecial talkを開催する運びとなった。」
 つまり、これまでの私の関わり方──アイク生原氏らや早大そのものへの関わり方──についての評価なのだろう。講演前に小宮山悟氏が聴衆に紹介されたり、講演後に桑田真澄氏からの花束贈呈があったりしたのも、同じ趣旨だと思う。
 続けて、生原氏の紹介映像が流され、二人の学生によるドジャースでのインターン体験報告もあった。白井総長の挨拶の後、応援部のブラスバンドとチアーリーダーによる歓迎演技も実演され、いよいよブッシュ氏が登壇した。
 以下ブッシュ氏の講演内容である。
1、テキサス・レンジャーズの共同オーナーとして
a.フランチャイズにおける成功のカギは何か?
 球団を所有しているオーナーは、想い入れをファンと共有すべきで、ファンを楽しませるにはどうするかを考えたら良い。ファンは何回も球場へ足を運ばせなければならないのだから。それには、チケットの高い値段が問題だ。家族が全員で楽しめる値段であるべきだ。景気に左右されない価格、雰囲気の維持、ファンとのフレンドリーな関係は結ぶことが大事だ。スタジアムに行きやすいことも重要だ。高速道路が渋滞してフラストレーションが溜まれば、再び観戦したい意欲も薄れる。
b.マスコミとの関係
 ファンの応援のためにマスコミを活用すべきであり、決してマスコミは敵ではなく、球団の戦略を丁寧に説明すべきだ。ベストなマーケティングは「ゲームに勝つこと」である。競技スポーツは、勝つことが求められる。
 選手は、メディアと交流し、例えばラジオのトークショーでも、ファンの心の声を知ることで大切だ。マスコミは我々と同志であり、選手は魅力的で人を引き付ける存在であらねばならない。選手と関わりを持ちたいと思うファンとの意思の疎通を図るよう、共同オーナーと共にマーケティングしながら、チームを率いていた。
c.分かっている人に権限移譲
 ボビー・バレンタインを監督に据えた時もあったが、ある年、交代させることを告げた。そのように充分な決意を持ってTOPを入れ替えねばならない重要な時がある。リッチな球団であれば、FAで獲得して選手団を構築できる。ヤンキースなどは興業収入も高い。一方、レンジャーズは優秀な野球人と首脳陣を揃えることで補われてきた。目標はワールドシリーズへの進出だが、そのための運営戦略は「自由な市場戦略=人材(権限移譲)」が第一である。
 サミー・ソーサを他チームにトレードしたこともあった。トレード翌年の活躍が見事であったためにファンからのバッシングは酷かった。しかし、オーナーとして説明責任を果たさねばならない時もある。
d.地域社会への貢献
 オーナー及び球団は、良い市民になる。子供の読み書きなど識字率を高めることは、良き球団市民となってお手伝いすることの一つだ。野球場でプレーできない子供たちに、他にも球場を整備してファンに楽しむ場を提供することも実行しなければならない。余談だが、昨日、日本シリーズを観戦した。アメリカの球場は声を揃えて楽しむことはない。感動した。
e.スポーツマネジメント
 ファンが楽しいかどうかがポイントだ。楽しければ球場に何回も行ける。勝つこともだ。野球は科学ではない、Art(芸術)である。個性がチームを創る芸術だ。
 チームを創ることとは、一緒に働く従業員を理解して、一体感を持って「文化」を創ることだ。オーナーとして、ファンと連帯感を持ってよく話をした。負けるとファンには怒鳴りつけられたが、それも心配してくれている証拠である。私の政治の仕事でも楽しむことができたと思う。
2、学生からの質疑応答
a.女子学生からの質問「スポーツ医科学について、どんな点に関心があるか」
ブッシュ氏「スポーツ=健康とまじめに考えている人は、タバコは吸わないだろう。酒も余り飲まないであろう。1日に20分で良い、散歩などによって心臓疾患も減る。大統領時もよくジョギングをした。しかし、膝を痛めたのでマウンテンバイクに変えた。ジムに通うのも良い。団体競技(フットボール、野球)のも参加して、とにかく心拍数を上げることだ。
b.男子学生からの質問「レンジャーズの共同オーナーとして最も重要なことは何か?」
ブッシュ氏「ファンは誰か。これがマーケティングで重要な所だ。オーナーは誰がファンか分かっている。球場が満席でない時、勝ってない時、どうするか。球場を清潔にすること、ファンとフレンドリーな関係を築くことだ。
c.男子学生からの質問「組織のTOPのリーダーシップとは何か?」
ブッシュ氏「信念を伝えるだ。原理原則を尊び、特に原則を曲げない意志を強く持つ。時間を守る。耳を傾け有能な人を見分ける。ファンはチームの一員である。約束を守る。スポーツ及び政治でも、人生一般にも言えることである。
d.男子学生からの質問「スポーツ産業について想うことは?」
ブッシュ氏「現在のような景気後退には生き残りを図らねばならない。不景気を脱却するためにスポーツもコスト削減は重要だ。しかし、不景気だと言ってもファンはお金を出して球場に来ている。この現象は大切にすべきだ。球団によってはチケットを値下げしている。問題は選手の長期契約である。新人でも4〜5年の契約をしている。ケガをしても高いお金を払い続けることほど馬鹿げていることはない。球団はコストを引き下げて、ファンをどうやって動員するか一番考えている。また、放映権は収入の太い柱の一つだ。私は子供の頃、ウィリー・メイズ(サンフランシスコ・ジャイアンツ外野手)の大ファンだった。人気のある選手はチームにとって必要だが、オーナーは説明責任を日々果たすよう、選手成績に目を配り、意志決定者としてファンと向き合う努力を惜しんではならない。
e.男子学生からの質問「地元にプロスポーツが存在することのプラスは、benefitの面は?」
ブッシュ氏「当初、スタジアムの構造が問題であった。安価な外野席が多く、内野席が少なかった。建て替えのコストを分担しないかと市民に呼び掛けた。市外の人たちも来てくれる球場ならば都市も潤う。州税務当局と市民とも協議して、税収の一部を消費税として徴収して建築費に充てることを、市民投票により賛成を得た。0.5セント税金を増やす。建設後は0.5セント減税する。賛否両論があったものの、アーリントン市は非常に小さな都市であったが、潤うことができた。今年、ダラス・カーボイズがレンジャーズの球場に隣接した場所に屋内ドームを完成させた。10億ドルを掛けたが、一つのチーム(レンジャーズ)が上手く行ったからだと思う。
 最後は校歌で締めた。残念だったのは、ピーター・オマリー氏が所用で来日できなかったことである。

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